【日本拳法空手道の理念と創始者】
日本拳法空手道は、「一撃必殺」を理念とし、実戦において一撃で相手を制することを目指す武道です。この武道は山田辰雄によって創始されました。
【山田辰雄の生い立ちと修業】
山田辰雄は1905年（明治38年）に兵庫県明石に生まれ、昭和期を代表する空手家の一人です。山田は、竹内佐一のもとで柔術を修業し、さらにいくつかの古流武術の研究をした後、1922年（大正11年）より講道館にて柔道を修業し、同年船腰義珍より空手の指導を受けました。1924年（大正13年）夏より、大阪に居住していた本部朝基の唐手術普及会に入門し、1926年（大正15年）には助教師（師範代）を務めるまでにその実力を認められました。
【本部朝基との関係】
本部朝基は、幼少期から武術に興味を持ち、糸洲安恒・松村宗棍・佐久間親雲上・松茂良興作に師事し、遊郭の辻町で数々の実戦経験を積み、ロシア人ボクサーを一撃で倒すなどの伝説を持ち、多くの弟子を育て、空手の発展に大きく寄与した偉大な空手家です。山田は彼の愛弟子の一人でした。1941年（昭和16年）に、本部朝基が沖縄に帰るまで指導を受けました。
【戦後の活動と道場設立】
戦後、山田は日本大学理工学部の空手部で師範を務め、東京荻窪に道場を開設しました。1955年（昭和30年）には東京飯田橋に日本拳法空手道の道場を開設し、1959年（昭和34年）にはグローブ着用による直接打撃制の空手競技を考案・発表しました。この試合形式は、後のフルコンタクト空手やキックボクシングの誕生に大きな影響を与えました。
【山田辰雄の業績と信念】
山田辰雄の業績は、空手の実戦性を追求し続けたことにあります。彼の考案したグローブ空手は、NHKテレビでも紹介され、日本の武道界に新たな風を吹き込みました。彼の言葉「実践なければ証明なし、証明なければ信用なし、信用なければ尊敬なし」は、実戦を通じて技術を証明し、その証明があって初めて尊敬を得られるという信念を表しています。
【大山倍達との関係】
また、山田辰雄は極真会館の創設者である大山倍達とも親交がありました。大山倍達は、山田の道場に訪れ、武術的な実戦空手を学びました。この関係は、両者の武道に対する情熱と実戦性の追求において共通点があったためです。なお、山田辰雄は梶原一騎作の劇画『空手バカ一代』の悪役である由利辰郎のモデルでもあると言われています。
【野口修との関係とキックボクシングの誕生】
さらに、山田辰雄はプロモーターの野口修とも関係が深かったです。野口修は、ムエタイの前チャンピオンを山田辰雄に引き合わせ、これがキックボクシング誕生のきっかけとなりました。野口修は、山田辰雄の実戦空手の理念に共感し、彼の協力を得て新しい格闘技の形を模索しました。
【杉並ジムの再開と活動】
杉並ジムは、1992年（平成4年）に再開されました。杉並ジムは、全日本キック興行に選手を送り出し、アマチュアボクシングの選手も輩出しています。このジムは、山田辰雄の実戦空手の精神を継承し、数多くの優秀な選手を育成しています。
【令和の時代と山田大輔の挑戦】
令和の時代に入り、日本拳法空手道・第三代宗家山田大輔の日本拳法空手道本部・キックボクシング杉並ジムは、今後もその活躍が期待されています。山田大輔は、祖父辰雄の理念を受け継ぎ、現代の武道界に新たな風を吹き込むべく、精力的に挑戦を続けています。